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つくり手から、ワインを知る。長野ワイン最前線/メルシャン・椀子ヴィンヤード(上田市)

つくり手から、ワインを知る。長野ワイン最前線/メルシャン・椀子ヴィンヤード(上田市)

クラスベッソ西軽井沢のある東信エリア。一帯のワイナリーは「千曲川ワインバレー」と呼ばれ、欧州系ワインの葡萄栽培に適していると言われています。「ヴィラデスト ガーデンファームアンドワイナリー」に代表される個人ワイナリーが集中する東御周辺に加えて、上田にも素敵なヴィンヤード(葡萄畑)があるんです。「シャトー・メルシャン」シリーズも評判のメルシャンがつくる日本ワイン。その生産地として注目を浴びる「椀子(マリコ)ヴィンヤード」にお伺いし、代表の加賀山茂さんにお話をお伺いしてきました。

地域とともに歩んできたヴィンヤード

つくり手から、ワインを知る。長野ワイン最前線/メルシャン・椀子ヴィンヤード(上田市)
加賀山さん:メルシャンでは、第一次ワインブームとよばれた1975年から、国内でのワイン製造に力を入れてきました。そのなかで特にこだわってきたのが、国産葡萄を使用した“日本ワイン”と呼ばれるジャンルです。全国に適した土地を訪ね、今では山梨、長野など4県にシャトー・メルシャンの原料用葡萄のヴィンヤード(畑)があります。そのなかでも椀子(マリコ) ヴィンヤードは、自社管理畑ということで様々なチャレンジとともに“質”を追求してきました。

――――:日本ワインの盛り上がりはここ10年ほどかと思っていたんですが、40年以上前から“日本ワイン”にこだわってきたのですね。椀子ヴィンヤードができるまでを教えていただけないでしょうか

加賀山さん:1998年にポリフェノールによる健康効果が注目されたことで、かつてないほどの赤ワインブームが沸き起こります。需要の拡大をうけてメルシャンでは葡萄畑となる大きな土地を探していました。またその一方で、ここ陣場台地周辺は遊休荒廃地となっていた土地の活用をどうするか、地域の地権者、農業委員や行政の方たちなどが中心となる“陣場台地研究委員会”が立ち上がっていました。調査してみると、陣場台地は緩傾斜で日当たり・風通しが良く葡萄栽培に向いているということで、メルシャンと地域双方の思いがピタッと合って2003年に椀子ヴィンヤードの造成を開始することになったんです。それ以来、陣場台地研究委員会と地権者さん、行政と地域のみなさんの協力のもと、葡萄を栽培しています。
つくり手から、ワインを知る。長野ワイン最前線/メルシャン・椀子ヴィンヤード(上田市)
――――:地域に根差したヴィンヤードなんですね。具体的に地元の方とどのような交流をしているのでしょうか

加賀山さん:20ヘクタールの畑を私たちスタッフ7名で運営しているので、収穫体験ツアーとして5日間・約400人の市民ボランティアの方に収穫を手伝っていただいています。ここは景観もよく気持ちがいい場所なので、友達や家族と参加したり、もう10年近く続けて参加される大ベテランの方もいて(笑)ものすごく助かっています。こういった取りまとめや、地権者さんとの間を陣場台地研究委員会の方に取り持っていただき成り立っています。

――――:10年近く続けて収穫体験ボランティアに参加したいくらい椀子ヴィンヤードは魅力的なんですね。それに収穫を手伝うことで「この2018年のシャルドネは、私が収穫したのよ」なんて言って友達にワインを紹介できたり、地元の産業に愛着がわきますよね。

加賀山さん:そういう存在になれることを、とても嬉しく思っています。また、畑の一角は地元小学校の「ふれあい農園」としてジャガイモ栽培を行っています。ついこの間、ジャガイモ収穫のお礼会ということで小学校に招かれたんです。その畑ではジャガイモ収穫後は蕎麦を栽培していて、皆でいただく「蕎麦の会」なんてものもあります。

個性のある葡萄をつくる
“椀子”という土地

つくり手から、ワインを知る。長野ワイン最前線/メルシャン・椀子ヴィンヤード(上田市)

加賀山さん:この椀子ヴィンヤードは、葡萄づくりに向いている気候条件が揃っています。まずは日当たり。長野のなかでも雨が少ない地域で、東京の年間降雨量平均が約1,500mmのところ、ここは約870mmなんです。そして日照時間も約2,170時間と長い。雨は葡萄の病気を引き起こす原因になりますから、いい葡萄を作るには大切な条件です。それにここにはいい風が吹くんです。午後から風が吹きだして夜の気温を下げてくれる。寒暖差が大きいと糖度があがり酸味とのバランスが取れた美味しい葡萄になるんです。
あと葡萄づくりに向いている土の条件として“水はけのよさ”が言われますが、実はこの椀子の土は粘土質で水はけがあまり良くないんです。土が良ければ葡萄の木は根をしっかり張ってくれるのですが、椀子の土だとあまり根を張れない。ただ面白いことに、葡萄にとってのストレスが、味に個性をもたらしてくれました
開設当初よりシャルドネやメルローの他にいくつかの品種を栽培していますが、椀子で栽培するシラーという品種には「ロタンドン」という白コショウの香り成分が強くでることがメルシャンの研究でわかっています。スパイシーで果実味豊かなワインが出来上がることから、シラーはこの土地によく合っていると言えます。椀子では2004年からシラーの栽培を進めており、日本でも先駆けと言えると思います。

――――:土地によって葡萄もずいぶん個性が違うんですね。例えば同じメルローの品種でも、長野県内の2か所(椀子/桔梗ヶ原)では個性がちがうのでしょうか

加賀山さん:けっこう違いますよ。椀子の葡萄は熟成が早く進むので果実の凝縮感があり、しっかりとしたタンニン分のあるワインになります。桔梗ヶ原はもう少しエレガントでシルキーな味わいです。そうやって各々の個性を楽しむのもワインの面白さですね。

“10年先に実る”ワインを
次世代への資産へ

つくり手から、ワインを知る。長野ワイン最前線/メルシャン・椀子ヴィンヤード(上田市)

――――:ワイン用の葡萄は、植樹してからどれくらいで収穫できるのでしょうか

加賀山さん:ワイン醸造に使えるようになるのは5~6年後でしょうか。十分な量が収穫できて、質も良くなるまでには10年くらいは必要かなと思います。いま椀子ヴィンヤードでは、新たに葡萄樹を植えていて合計で7,500本を植樹しました。更に来年以降増やしていく予定です。

――――:次世代への資産という面もありますね。10年後の椀子ヴィンヤードが楽しみです。今年の葡萄はどうでしょうか?台風もあって心配していたのですが

加賀山さん:今年は萌芽と開花は1週間ほど早く、その後空梅雨で夏の猛暑の中でもすくすく育ってくれました。幸いにも収穫時期に当たった台風の影響もなく、病気もほとんど見られません。収穫量も今年は100トンくらいを見込んでいて、ワイン製造量も例年より増えそうです。白ワイン・赤ワインとも例年以上に良いワインが出来あがっていて楽しみです。

ワイナリーが2019年秋にオープン
これからの”椀子ワイナリー”

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加賀山さん:念願だったワイナリーが2019年秋にオープンします。今は収穫された葡萄を勝沼に運んで醸造していますが、ワイナリーが出来ることで、ここで収穫したブドウをそのまま醸造できるようになります。ここでは、うちのメンバーが栽培だけでなく一緒にワインを造っていきます。今はオープンに向けて、スタッフのひとりが勝沼で醸造を学んでいます。

――――:そうなんですね。農作物として葡萄をつくる事の延長にワインづくりが繋がるという事が面白いです。

加賀山さん:わたしたちは、ワイン造りは“農業の一環”と考えています。葡萄の栽培から醸造まで同じ土地で一貫して行うのは、世界のワイン産地では一般的なんです。ただ、赤ワインは飲めるまでに3年必要なので、椀子ワイナリーで造られたワインがお手元に届くのは少し先ですけどね(笑)シャルドネやソーヴィニヨン・ブランの白ワインは2020年から出荷できるので、まずは白から楽しんでいただきたいです。

――――:ワイナリーには、見学に行くことはできるのでしょうか

加賀山さん:はい。常設でお客さまに見学に来ていただけるよう考えています。ワイナリーは、ヴィンヤードのなかでも一番高台に建設予定です。蓼科山や美ヶ原、晴れていれば白馬連峰から北アルプスまで見渡せて、2003年の造成当初から「この場所にワイナリーを建てたい」と空けていた“とっておきの場所”になります。椀子に来たらワインの品質もですが、この眺めも楽しんでいただけると思います。いくつかのテイスティングのコースなども考えて、お客様との新しいふれあいが出来ると思っています。
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シャトー・メルシャン・クラブ

植樹や収穫体験は、上田の地元向けでの募集がメインですが、メルシャンの会員サービス「シャトー・メルシャン・クラブ」でも、植樹や収穫体験ツアーなどを企画・募集しています。椀子ワイナリーのオープン情報もメールマガジンで発信されるので、気になった人はぜひメンバー登録をしてみてください

シャトー・メルシャン・クラブ
※会員登録・年会費は無料です。
※会員登録は20歳以上の方に限ります。

上田・小諸などにもアクセスしやすい
“ 暮らす別荘 ” クラスベッソ西軽井沢

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雄大な浅間山を仰ぐ、大自然に囲まれた信州の隠れたリゾート“クラスベッソ西軽井沢”。
軽井沢のリゾートエリアで美術館をめぐる文化的な旅はもちろん、真田幸村公らの歴史に触れる上田エリア、史跡と自然が融合する小諸エリアへも近く、快適なアクセスと、信州への旅をより深く楽しめるロケーションが魅力。全てデザインとインテリアが異なる独立した4棟の“住まい”を、あなたのお好みで貸し切ることができます。
暮らすように過ごす、新しい旅のスタイルへ。クラスベッソがお連れいたします

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